【『薫る花は凛と咲く』――交わるはずのなかった二人が紡ぐ、甘く切ない青春ラブストーリー】

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「いらっしゃいませ」
低く落ち着いた声と、少し不器用な笑み。実家のケーキ屋を手伝っていた紬凛太郎の前に現れたのは、ひときわ気品を漂わせる少女・和栗薫子だった。

バカばかり集まると揶揄される千鳥高校に通う凛太郎と、名門お嬢様学校・桔梗女子に在籍する薫子。まるで住む世界が違う二人が、偶然にも小さなケーキ屋で出会い、そこから“許されざる交流”が始まっていく。

『薫る花は凛と咲く』は、異なる階層・価値観の隔たりをテーマに描かれる青春恋愛物語だ。千鳥の男子は粗暴で野蛮、桔梗の女子は気高く品格ある――そんなステレオタイプが色濃く残る両校で、凛太郎と薫子の関係は決して受け入れられるものではない。だが、互いに惹かれ合い、少しずつ近づいていく心の距離は、甘いケーキのように柔らかくも儚い。

凛太郎の魅力は、見た目の強面とは裏腹に持つ繊細さと誠実さだ。寡黙ながら人を思いやる優しさを秘め、薫子にだけ見せる不器用な笑顔が、読者の胸を強く打つ。一方の薫子は、桔梗女子の生徒らしい凛とした佇まいを持ちながら、時折見せる年相応の無邪気さや甘えが愛おしい。二人のやり取りはまるでケーキの層を切り分けるように、甘さと切なさが幾重にも重なり、読む者を魅了してやまない。

物語の舞台として描かれる“ケーキ屋”という存在も特別だ。そこで過ごす時間は、彼らにとって日常でありながら秘密の共有でもある。クリームの香り、ショーケースに並ぶ彩り豊かなケーキ、夕暮れに差し込む光――そのひとつひとつが二人の心を近づける演出となり、ページをめくるたびに甘美な余韻を残す。

また、周囲の人間関係も大きな見どころだ。千鳥高校と桔梗女子、それぞれの仲間や友人が二人の関係にどう影響を与えるのか。敵対心、嫉妬、誤解――さまざまな感情が交錯し、物語をよりドラマティックに彩る。

さらに注目すべきは、タイトルに込められた意味。「薫る花は凛と咲く」。まるで薫子の存在そのものを表すように、気高く美しく、それでいてどこか切なげに香り立つ彼女の姿が、凛太郎の人生に鮮烈な彩りを与えるのだ。

もしこの作品が気になったなら、まずは試し読みから始めてみてほしい。以下の主要電子書籍サイトで公開されている。

  • コミックシーモア(www.cmoa.jp)
  • ebookjapan(ebookjapan.yahoo.co.jp)
  • BookLive!(booklive.jp)
  • DMMブックス(book.dmm.com)

『薫る花は凛と咲く』は、ただの学園ラブストーリーではない。偏見や壁を越えた先にある“真実の想い”を描いた、胸に響く青春ドラマだ。ページを閉じる頃には、きっとあなたも凛太郎と薫子を応援せずにはいられなくなるだろう。

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