「……いい匂いだ」
ジュウジュウと音を立てるフライパンから立ち上る香ばしい煙。旅の途中、焚き火の上で猪肉の生姜焼きを作っていた向田剛志は、ふと背後に漂う圧倒的な気配に気づく。振り返れば、そこにいたのは神話級の魔獣――フェンリル。その巨大な瞳は、ただただ剛志の料理に釘付けになっていた。
――そう、この瞬間から『とんでもスキルで異世界放浪メシ』の伝説が始まるのだ。
本作の最大の魅力は、異世界グルメと冒険の融合だ。主人公・剛志が授かったスキルは、戦闘や魔法ではなく、まさかの【ネットスーパー】。現代日本のスーパーの商品を異世界で取り寄せられるというユニークすぎる力だ。最初は「戦えない無能スキル」と見られがちだが、その真価は料理にあった。
異世界の素材と現代調味料を組み合わせることで生まれる、圧倒的な美味しさ。醤油と生姜で漬け込んだ猪肉、カリッと揚げた魔鳥の唐揚げ、カレー粉で煮込んだ魔物シチュー……。食べた者を虜にし、ついには最強の魔獣・フェンリルすら「契約してやる」と言わしめるのだから、その影響力は計り知れない。
フェンリルとの掛け合いもまた、本作の大きな楽しみだ。圧倒的な力を誇るのに、剛志の料理の前ではただの食いしん坊。豪快に肉を平らげ、満足そうに尻尾を振る姿は、ギャップ萌えそのものだ。彼の存在が物語にユーモアと温かみを与え、旅路を一層彩っている。
さらに見逃せないのは、剛志の旅のスタイルだ。普通の異世界主人公なら勇者として国を救う大冒険に駆り出されるところだが、彼はその胡散臭さを見抜いて「国外逃亡」を選ぶ。このリアリストな判断が、逆に読者に爽快感を与える。異世界でサバイバルするのではなく、“美味しいものを食べながら自由に旅をする”という姿勢が、多くのファンの共感を呼んでいるのだ。
また、物語の随所に挟まれる原作者・江口連の書き下ろし短編小説も見どころ。コミックスの世界観をより深く味わえる構成になっており、キャラクター同士の掛け合いや旅の裏話が、作品の厚みをさらに増している。
「異世界グルメ」というジャンル自体は数多く存在するが、本作はその中でも群を抜いて人気を博している。理由は単純明快――“食欲をそそる描写”と“心を満たす冒険”。この二つが絶妙なバランスで絡み合い、ページをめくる手を止めさせないのだ。
もし興味を持ったなら、まずは試し読みから楽しんでみてほしい。以下のサイトで公開されている。
- コミックシーモア(www.cmoa.jp)
- ebookjapan(ebookjapan.yahoo.co.jp)
- BookLive!(booklive.jp)
- DMMブックス(book.dmm.com)
『とんでもスキルで異世界放浪メシ』は、バトルではなく“料理”で異世界を渡り歩くという斬新さが最大の魅力だ。読み進めるうちに、きっとあなたも「お腹が空いて仕方ない!」という気持ちに襲われるだろう。そしてページを閉じた後も、剛志とフェンリルのほのぼのした食卓を思い出し、また続きを読みたくなるに違いない。