【『宇宙兄弟』――2025年、兄弟の夢が火星へと飛び立つ!】

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「兄ちゃん、また一緒に宇宙へ行こうよ。」
少年時代、星空を見上げて語り合った夢。その夢は、大人になるにつれて現実に押し潰され、忘れ去られてしまうものだと誰もが思う。だが『宇宙兄弟』は、その“忘れかけた夢”を真正面から掴み取りに行く物語だ。

弟の日々人は、月面滞在クルーの一員として人類の最前線を駆け抜ける。一方、兄の六太は会社をクビになり、道に迷ったまま。だが弟から届いた一通のメールが、六太を再び宇宙へと駆り立てる。「まだ、遅くなんてない」――その想いが、ページをめくるたびに胸を熱くする。

この作品の魅力は、単なる宇宙開発漫画にとどまらない点にある。確かに緻密な宇宙技術や訓練描写は本格的で、まるでJAXAやNASAのドキュメンタリーを見ているかのようなリアリティがある。しかし物語の根幹は“人間ドラマ”だ。兄弟の葛藤、仲間との絆、挑戦の裏に潜む不安や恐怖。六太が夢にしがみつきながらも弱さに悩む姿は、読者自身の姿と重なる。

また、未来の宇宙開発をリアルに描きつつも、そこにユーモアを忘れないのも『宇宙兄弟』の凄さだ。六太の人間臭い失敗や、仲間たちとの掛け合いは、思わず笑ってしまう場面も多い。その笑いがあるからこそ、シリアスな挑戦や別れのシーンがより鮮烈に心に刺さる。

そして何よりも心を打つのは「兄弟の物語」であること。日々人が先に宇宙を駆け抜ける姿は誇らしくもあり、同時に六太の劣等感を刺激する。しかしその葛藤こそが、六太を再び夢に立ち向かわせる原動力となる。夢を追うのに“遅すぎる”ことなんてないと、六太は証明してくれる。

実際、この作品を読んで宇宙に憧れを抱き、JAXAの試験を受けた人や科学の道を志した人も少なくないと言われる。フィクションでありながら、人の人生を変えてしまうほどの熱を持った作品なのだ。

試し読みは以下のサイトで公開されている。

  • コミックシーモア(www.cmoa.jp)
  • ebookjapan(ebookjapan.yahoo.co.jp)
  • BookLive!(booklive.jp)
  • マンガBANG!(manga-bang.com)

『宇宙兄弟』は、夢に迷ったすべての人に贈る物語だ。ページを開けば、六太と一緒に空を見上げ、再びあの日の約束を思い出すだろう。2025年を迎えた今、彼らの物語は“未来の自分”へのメッセージでもある。


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